黒子の観察者

テクノロジーやビジネス、音楽について書くブログです。

【アドテク】アメリカでDSPが支持される3つの理由

DSPを含めたアドテク業界は主力企業の株価低迷もあり終焉論も定期的に出てきますが、個々の企業での隆盛はあるにせよアメリカではDSPがかなり一般化してきているように思えます。

日本ではディスプレイ広告は「YDN、GDNで十分じゃない?」という論調が根強く、業界大手のフリークアウトでも年商40億円程度とアドネットワークに置き換わるにはまだ時間がかかりそうです。そこで、筆者が思うDSPがアメリカでは支持されている主要な理由を簡単に紹介したいと思います。

f:id:ob_tanuki:20160213132122j:plain

 1.透明性

多くの米国系DSPベンダーの営業資料にはほぼ必ず紹介されているのが透明性です。DSPとアドネットワークで最も異なる点ともいって良いでしょう。なぜならDSPは広告の買い手側に100%フォーカスするために作られているツールだからです(本来は)。一方アドネットワークは広告の買い手側から売り手のメディア側まで垂直型にカバーしているため、立場が不明瞭です。そのため様々な理由でデータを開示することができず透明性でDSPに劣ります。

ただしDSP業者の中には「プライベート」DMP、SSPを持つ企業もあり、そういった企業は高い透明性を論理的に保つことは難しいでしょう。例えるならば裁判の原告と被告の弁護人が同じ事務所に所属しているようなもので、性悪説で考えれば消費者利益よりも自社利益を優先したスタンスをとることができます。

少し脱線しますが、なぜアメリカで透明性が求められるようになったかを一言でいうと、クリック以外の広告価値が認められてきたからです。いつどこに出ようがCPAさえ見合えばOKというキャンペーンを前提に作られたアドネットワークと異なり、いつどの面で誰にどんな広告を表示するか総合的に管理するDSPとではそもそもの設計理念が異なります。(なので基本CPM課金です)ブランディング目的の広告キャンペーンにはより詳細なレポーティングが求められます。

エンドユーザーの視点に立てばコンテンツが第一なのは当たり前で、広告はついでに(邪魔だけど)目に入るものです。ただ目に入っている以上、良くも悪くも全く意味が無いとは言えないということでしょう。もちろんクリックされるに越したことはないですが。

2.掲載先のコモディティ化

SSPが普及し「接続さえされていればどのDSPでも出せる広告枠は理論上同じ」という状況にアメリカはあります。垂直統合型のアドネットワークであれば「どのメディアに出るか」というのは最大のセールスポイントでしたが、DSPに関して基本的にそれはありません。PMPのさらなる普及により純広告も巻き込んでこの傾向は今後より強くなるでしょう。

この様な状況でDSPを使う利点を以下に3つ紹介します。

①複数の管理画面を使う必然性が減り、広告運用者の負担が軽減される

②掲載面で差別化できないため、DSP自体の機能に競争原理が働き利便性の向上が期待できる

③理論上では広告の買い手が増え、良質なメディアの収益性が上がる

ただし日本ではPCの圧倒的王者Yahoo! JAPANが自社在庫を解放しておらず、ヤフーに出すにはYDN、Y!DSP、そして独占契約のCriteoのみという状況です。同様にスマホの圧倒的王者LINEもフリークアウトの子会社を連結子会社化し在庫をフリークアウトに限定公開する旨のリリースを公開したことから、あと数年日本では上記で紹介したような恩恵を受けることは難しい様に思えます。

3.オムニチャネル

近年バズワード化しているオムニチャネルですが、企業の顧客分析/アプローチとしては当然の流れで今後更に注視されるようになると思います。そのような状況下でオムニチャネル対応にDSPは一日の長があります。

なぜなら、前述の繰り返しになりますがアドネットワークと異なりDSPは

①「接続」することで機能をできることを増やす

②クリックだけではなく広告表示自体に意味がある

という前提で設計されているツールだからです。

今後アメリカでは従来のテキストやバナー広告だけではなく、動画、ネイティブ、更にはテレビ、ラジオ、OOH、映画などの広告枠も一つのDSPでRTB取引されるようになると思われます。そしてその広告効果もニールセンやコムスコアなどを通じDSP上で測定ができるようになるのではないでしょうか。

最後に

日本でも海外でも時よりオワコン化が囁かれるアドテク業界ですが、アメリカに関しては今後無数にあるアドテク企業は淘汰され残った勝ち組企業がマーケットをどんどん拡大しています。アドフラウドやVewabilityなど課題も多い業界ですが、日本を含めたグローバルマーケットではどのような動きになるのでしょうか。

※本記事は個人の意見ですので不備あればコメントください。